学芸員発言に対するアピール
先日、地方創生担当大臣の観光に関する文化財の活用に関連した発言により、学芸員や文化財に関わる仕事に従事する専門職が社会から少なからず注目を集めるできごとがありました。
文化財は、先人達がつくり、使い、残してきたものであり、人類のこれまでとこれからを考える基礎となる財です。今に生きる私たちは、文化財を研究し、可能な活用をはかりつつ、その価値を守り、次の世代へと伝える義務を負っています。学芸員は、私たちの代表として、その中心となって活躍する専門職であり、博物館や美術館などの企画、展示や解説などを通して、両立しがたい保存と公開の責務を果たすべく、広く一般に文化財の価値を伝える役割を担っています。
日本文化財科学会は、文化財の材質・技法・産地・年代測定・古環境・探査・保存科学・情報システム、文化財防災等についての自然科学と人文科学の共同研究をおこなう専門家の組織です。
文化財の研究や実際の保護活動については、人材や費用、施設などが必ずしも良好な環境にあるわけではなく、また、実際の個別の文化財に対する作業には新しい困難に直面することも少なくありません。これらの課題に対処するには、高度な専門知識や技術の蓄積、そして連携した取り組みが必要であり、日々それに取り組んでいる全国の学芸員は日本文化財科学会の重要な構成員です。
日本文化財科学会は科学的な視点から文化財研究をすすめ分かりやすい展示をはじめとする適切な活用を進めつつ、文化財の保護をおこない、後世へと伝えていくことが学芸員を含む会員の使命だと考えています。そして、日々困難に直面する会員をはじめ、その仲間達と協力し、文化財のもつ情報を引き出し、さらに未来の世代に文化財を伝えていくことを目指して活動を続けていきます。学芸員や文化財に関連する専門職員への理解と応援をよろしくお願いいたします。
日本文化財科学会会長 長友恒人